【本】熱源 川越宗一著

本、映画、ドラマ

「熱源」は2019年8月に発行された書下ろし小説です。第162回(2019下期)に直木賞を受賞しました。この本を読もうと思ったきっかけは受賞作だからではなく、宮崎美子さんが「熱い!」と雑誌で紹介されていたからでした。このころ読書の必要性を感じていて、きっかけを受賞作や紹介に求めたのです。内容はよく知らず、読み始めてから樺太(カラフト)を舞台にした話であることを知りました。


「熱源」は史実に基づいたフィクションでスケールが大きく、ぼちぼちはなかなか読み進めることができませんでした。途中で長いあいだ寝かせてなんとか1度読み終えたものの、ちゃんと読めていない気がしていたのですが、つい最近やっと再読することができました。

自分が何人(なんぴと)であるかということ

登場人物
ヤヨマネクフ(山辺安之助)カラフト出身のアイヌ
シシラトカ(花守信吉)おなじくカラフト出身のアイヌ
千徳太郎治 和人(日本人)の父とアイヌの母を持つ
キサラスイ アイヌ、トンコリ(五弦琴)の名手
チコビロー アイヌの頭領
バフンケ アイヌの頭領、実業家
イペカラ バフンケの養女、トンコリ(五弦琴)を弾く
チュフサンマ バフンケの姪
ブロニスワフ・ピウスツキ ポーランド人
アレクサンドル・ウリヤノフ ポーランド人革命家
レフ・シュテルンベルグ サハリンに住む民族学者
ヴァツワフ・コヴァルスキ ロシア地理学協会の会員
ユゼフ・ピウスツキ ブロニスワフの弟、革命家
金田一京介 東京帝大の学生、アイヌ語を研究
白瀬矗 南極点到達を目指す探検家

登場する人物たちの内にはそれぞれの熱さがあり、熱をあらわにしている人も内包する人もいます。ポーランド語を話すことを禁じられ、ロシア人として生きるピウスツキ。日本人として生きるアイヌ。
アイヌとはアイヌ語で「人」という意味だそうです。
沖縄が「琉球王国」であったような国の名をアイヌは持ちません。言葉に時制もないそうです。

目に見える全てについて、それが誰のものかを決めないと気が済まないらしい

「どうも今どきは———目に見える全てについて、それが誰のものかを決めないと気が済まないらしい」これは作中で、ロシアと日本が樺太をロシアのものと決め、日本に移住するときにチコビローが言った言葉です。ただアイヌとして生きたいだけなのにままならない現実。

弱肉強食が自然の摂理

こちらは大隈重信がロシアに組み入れられたポーランド人のブロニスワフに話した言葉です。強さこそが「善」であるという信念です。それに対しブロニスワフは「その摂理と戦う」「弱者は食われる。競争のみが生存の手段である。そのような摂理こそが人を滅ぼす————」と返します。
その言葉に大隈が「我らは摂理の中で戦う。あなたは摂理そのものと戦う。結構けっこう」と応えるところで人物の大きさを想像できました。

摂理はいまだ変わらず

今の社会を見ても、ブロニスワフの信念はいまだ実現していないという印象を持ちます。
国境線がある。紛争がある。思うことを口にするだけで拘束される人がいる。
それは「弱肉強食の摂理」の代替案がないからではないでしょうか?

人それぞれの主張考えがあり、それをうまく調和させることができたら弱肉強食の摂理も変えられるのかもしれません。これが解決したら世界平和が実現するに違いないと思います。
これからの時代、この「調和をはかる」というところをAIが解決に導いてくれないか。と期待を持ちました。

変わらない自然の摂理

史実に基づいているというだけあって登場人物はそれぞれ熱く生きたあと、あっさりと亡くなった事実が語られます。この「誰もが死ぬ」という摂理は今のところ変わることがないと思えます。熱く生きて亡くなった人たちの意志がただ消えてしまうのは惜しいと感じました。

では今日もぼちぼち行きましょう。

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